- 北イタリアのトリノへ行こうと思っている
- 20世紀前半・激動の時代に実在していた家族のリアルな物語を読みたい
- イタリア人女流作家ギンズブルグの作品を読みたい
- 須賀敦子さんがつづる文章が好き
- イタリア語を勉強している(中級者~)
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海外の小説と聞いて「敷居が高い」と思っていませんか?
かつて、わたしもそう思っていました
今は人気のある小説から少しづつ読んでいます
今回は、これまで読んだ本の中から、イタリアの小説「ある家族の会話」を取り上げます。
人気作家の江國香織さんが若い頃に読み、影響を受けた本なのだそうです
なんだか興味がわいてきた
本記事では「ある家族の会話」を読んでの感想を、よかったと思う理由を3つ挙げて紹介します。
ストーリーのネタバレはほとんど書きませんでした。
ですのでまだ本を読んでない方も、安心して最後まで読んでもらえたらと思います。
ミエッタです。
「伊・食・旅」をテーマに情報発信しています。
- 乗務歴20年2ヶ月の元国際線CA
- 日本とイタリアをもっと自由に行き来したくて早期退職
- イタリア在住経験あり
イタリア小説「ある家族の会話」への誘い
イタリアでは知らない人はいないほど有名な小説です
著者は、イタリア人女流作家ナタリア・ギンズブルグ(1916~1991)。
翻訳されたのは須賀敦子さん(1929~1998)。
英語版は「Family Sayings」。イタリア語原書は「Lessico Famigliare」というタイトル名がつけられています。
読み終えて、とくによかった点は3つ。
- 小説でありながらすべてノンフィクション
100年前に実在していた人たちが登場人物 - 時間と距離を越えて感じる不思議な共感
生きている時代や国が違うことを忘れてしまいそうになる - 須賀敦子さんの翻訳が素晴らしい
1. 小説でありながらノンフィクションの物語
「ある家族の会話」は小説でありながら、著者ナタリア・ギンズブルグの家族の回顧録でもあります。
つまり小説の中に描かれている個性豊かな家族や周囲の人々は、すべて実在していた人物なのです。
中にはウィキペディアに出てくるような人物・・・著名な実業家や画家・思想家もナタリアの家族と深い交流があり、たびたび登場します。
歴史上の人物の普段の姿も垣間見えて、別の観点からも興味深い小説です。
しかも登場人物は、すべて実名で書かれています。
まえがきでナタリアは、こう記しています。
この本にでてくる場所、出来事、人物はすべて現実に存在したものである。
架空のものはまったくない。(中略)また私は自分が憶えていたことだけしか書かなかった。
『ある家族の会話』まえがきより
その言葉の通り、人物の描写にも、憶えてないことは憶えていないと潔く書かれています。
たしかに幼い日の記憶は、時に断片的だったりしますね
2. 時間と距離を越えて感じる共感
舞台は1920年代から1950年頃にかけての北イタリア。
今から約100年前にさかのぼり、著者の幼少の頃の記憶から物語は始まります。
激動の時代に生きた家族の会話や身の回りの出来事が、末娘ナタリア(著者)の目線で淡々と綴られていきます。
小説では、ナタリアの両親や兄弟たちの話す会話の中に【口癖】が何度も出てくることに、読み進めていくと気づきます。
父親の口癖「新星出現!」がたまに出ると《わ、出たーっ》とクスッと笑ってしまうことも
「なんというロバだ!」と言っては、なにかと家族の行動にケチをつける気難しい性格の父親。
しかし本当は常に子供たちのことを案じていて、何かあれば母親と一緒にどこへでもかけつける……。
普段は怒鳴ってばかりいて家族から煙たがられている父親の、心の奥底にある家族への愛情が、読み進むほどに光っていました。
父親って、いつの時代もいとおしい存在だったのですね
一方、ナタリアの母親は、どんな状況下においても基本無邪気で明るい。
両親の会話のやりとりを読んでいると、まるでホームドラマを観ているかのような気持ちになってきます。
どこにでもいそうな頑固オヤジと、明るくかわす母親。
ほのぼのしますよー
小説では、ナタリアの記憶の中にいる親戚・家族と縁があった友人や使用人たちも大勢登場します。
彼らもまた、ひとりひとりが実に個性豊かで愛すべき人たち。
登場人物が多いので、人物相関図を書きながら読むことをおすすめします
家族が言っていた口癖の話に戻ります。
この口癖には家族間にしか解らない隠語的なニュアンスをも含んでいたことを小説の中で書かれています。
やがて時は流れ、兄弟たちは皆大人になり、それぞれ結婚をし、バラバラに暮らすように。
戦争で辛かった時代をも経て・・・
両親は老い、親しかった人が亡くなり・・・
長い年月とともにいろんなことが変わってしまっても、家族間での会話は不変でした。
ナタリアが幼少時代にいつも聞いていたあの言葉。言い回し。
物語の終盤で家族が話す変わらない口癖に、わたしは懐かしさと安堵感を覚えずにはいられませんでした。
会話を通してみえてくる『ある家族の長い物語』に、不思議な共感と親しみがわいてきます。
年齢を重ねたときに、自分の人生と重ねながらまた読み返してみたい
3. 須賀敦子さんの翻訳が素晴らしい
イタリア小説「ある家族の会話」を読もうと思った直接のきっかけは、須賀敦子さんの翻訳本だと知ったからでした。
ここであらためて説明するまでもないのですが、須賀敦子さんは翻訳家以外にもいろいろな顔をもっておられた方。
遅咲きの作家としても知られていて。
61歳の時に文壇デビューされ、処女作「ミラノ 霧の風景」では、講談社エッセイ賞と女流文学賞というふたつの賞を受けられました。
須賀さんは、あとがきにこんなことを書いています。
初めてこの作品を読んだときから、私はこれを日本語に訳したいと思い続けた。
-「ある家族の会話」あとがきより
須賀さんの思いが叶ったのは、「初めてこの作品を読んだとき」から、実に16年もの長い年月を経てのこと。
江國香織さんがこの小説から影響を受けたように、須賀敦子さんにとっても ”物書きとして” たいせつな作品であったようです。
あとがきでは、【物語の時代背景】や【著者ナタリア・ギンズブルグ】について、須賀さんの言葉で解説されています。
ですので、あとがきを先に読んでから小説を読み始めるのも、わかりやすくておすすめです。
小説の冒頭からとっつきやすくなりますよ!
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読了後にイタリアへ旅するなら【小説ゆかりのトリノへ】
ナタリア・ギンズブルグが書いた自伝的小説「ある家族の会話」は、北イタリアの都市トリノが舞台。
小説には、ナタリア一家が住んでいた地名や当時の様子なども、具体的に描写されています。
本を読み終えたあと、もし北イタリアへ行く機会があれば、トリノまで足をのばしてみられてはいかがでしょうか。
ナタリア一家の足跡を辿りながら街歩き・・・こういう旅もまた素敵です。
読んでまだ日が浅いのでわたしはまだ行けてないけど、本を片手にいつかトリノを歩くのが今から楽しみです
【イタリア語検定対策に】原文で読む「ある家族の会話」
もしあなたがイタリア語を学習されているなら、「ある家族の会話」の原書「Lessico Famigliare
筆者は、須賀敦子さんが翻訳された日本語版「ある家族の会話」の文章が好きです。
しかしながら読み進めていくうち、小説の登場人物が実際どんなイタリア語の言葉で会話をしていたのか?知りたい好奇心が膨らみました。
父親や兄姉たちが、事あるごとに口にしていた口癖の数々・・・
ナタリアの母親がよく言っていたあの言葉この言葉・・・
たとえば・・・父親の口癖「新星出現!」
原書では「nuovo astro che sorge!」と言っていました
原語で読むと、言葉の持つニュアンスから、登場人物たちがまるで目の前にいるような気分にさえなってきます。
と同時に、
須賀敦子さんの翻訳がいかに素晴らしいものかも理解できました。
言葉選びって繊細!
日本語もイタリア語もね
辞書を片手に知らない単語をひとつひとつ調べながら読み進めるのは、やはり時間がかかります。
日本語版で「ある家族の会話」を先に読んでおけば、あらすじがわかっているので、イタリア語で読むときも頭に入ってきやすいでしょう。
イタリア語の原書、おすすめの読み方は……
- 日本語訳とイタリア語とを交互に読み進めていく
- 日本語訳版をさいごまで読み終えてからイタリア語の原書を読む
自分に合う順序で読んでみるといいかと思います。
なお筆者はイタリアの書店で購入しましたが、
なんと日本でも、Amazonで「ある家族の会話」の原書「Lessico Famigliare
\イタリア語検定の長文読解対策にも◎ /
「Lessico Famigliare」は全編189ページ。
長すぎず短すぎず、イタリア語で読むにはちょうどよいボリュームです。
生きた会話や、試験に出そうなイディオムもたくさんでてくるよ
イタリア人俳優による朗読でリスニングもできる
イタリア語の学習用教材としてイタリア語原書を読むのなら、あわせてリスニングもできたら最強ですよね。
利用しているAmazonのオーディオブックで「ある家族の会話・LESSICO FAMIGLIARE」を見つけたので、何度も聴いています。
イタリア女優が朗読する「ある家族の会話」を聴くことができます。
▶イタリア語で聴く「ある家族の会話」オーディブルページを見てみる(試聴可)
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ナタリア・ギンズブルグ著「ある家族の会話」を読む|まとめ
本記事では、ナタリア・ギンズブルグ著「ある家族の会話」を読んだ感想をまとめました。
小説でありながらすべてノンフィクションの物語
時間と距離を越えて感じる共感
須賀敦子さんの翻訳が素晴らしい
事実は小説より奇なり。
実在していた登場人物がなにげなく発した言葉には、心に響くものも多々ありました。
ネタバレなし感想だけを書きました
何かを感じた方は、ぜひ本を手に取って読んでみてください
そしてイタリア語を学習中の人には…
勉強ツールとしても、おすすめしたい本です!
「ある家族の会話」の原書「Lessico Famigliare」文中には、生きたイタリア語会話がたくさん出てきます。
▶ 書籍 Lessico Famigliare(イタリア語)ナタリア・ギンズブルグ著
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